2013年3月21日木曜日

教育委員会制度は廃止すべき

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130320/plc13032018010010-n1.htm
(以下引用)

【高橋昌之のとっておき】無責任体制の根源・教育委員会制度は廃止すべきだ
2013.3.20 18:00

報道陣の質問に答える日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長=7日午後、大阪市役所

 産経新聞が14日付朝刊で報道しましたが、日本維新の会が教育委員会制度を廃止するための関連法改正案を今国会に提出する方針を固めました。いじめによる自殺問題、体罰問題、さらには歴史教育問題など難問が山積しているのが日本の教育の現状ですが、その中で「教育の無責任体制」がはびこっている根源は、教育委員会の存在だと私も考えていましたので、維新の会の方針には大賛成です。

 政権与党の自民党も昨年12月の衆院選の政権公約で、「教育委員会の責任体制の確立と教育行政の権限のあり方の検討」を打ち出しています。教育の無責任体制を改革するという点では、維新の会と方向性は同じです。私としては自民党の「教育委員会の改革」というのでは生ぬるい、その程度では日本の教育の無責任体制を変えることはできないと考えますので、自民党も維新の会の方針を受けて、教育委員会の廃止まで踏み込んだ改革を検討すべきです。

 維新の会がまとめた「教育委員会廃止に向けた基本方針」はまず、「国と地方公共団体を教育行政の中心とし、教育委員会は廃止して地方公共団体の一部局(仮称・教育行政局)とし、その権限や地位も他の行政部局にならうもとする」としています。つまり、教育行政の最終責任は国においては政府であり、地方自治体では首長であることを法律に明記するということです。

 また、基本方針は地方公共団体においては「教育の目標や基本計画の作成は首長、教職員の人事は教育行政局のトップで首長が任免する教育長が行う」とする一方、新たに地方公共団体の教育行政をチェックする組織として、首長が指名する「教育監査諮問委員」を置くこととしています。

 この改革を行うには、地方自治法、地方教育行政組織運営法、文部科学省設置法を改正する必要がありますから、維新の会は今後、基本方針に基づいてこれらの改正案をまとめ、今国会に提出する方針です。

 「教育委員会を廃止する」というと、まだ多くの方は「そんなことが本当にできるのか」「教育の公平性、中立性は保たれるのか」などと思われるかもしれません。

 しかし、ほとんどの教育委員会は形骸化していて、行政の事務局が作成した案を追認しているにすぎません。それを実態通りにして、地方公共団体の首長が教育行政の最終責任を負うようにするということですから、実現は難しいことではありません。さらに、首長が最終責任者ということが明確になりますから、首長はよりよい教育行政を行うため真剣に取り組むようになるでしょう。

 一方、「公平性」や「中立性」という観点も、維新の会が基本方針に盛り込んだように、「教育監査諮問委員」のようなチェック機関を作れば問題ないと思います。そもそも地方公共団体には議会があるのですから、議会がしっかりチェックすればいいだけの話です。

私も地方支局在任中に教育委員会を取材した経験がありますから、その実態は目の当たりにしています。やはりその地方公共団体でも、教育委員会は委員が単なる名誉職化しており、委員会自体も実質的な議論はせず、事務局の案を追認しているだけでした。

 ここで、簡潔に教育委員会について説明したいと思います。教育委員会は各地方公共団体、つまり都道府県、市町村ごとに設置されている行政委員会です。ちなみに行政委員会とは、行政機構からある程度独立して、行政に関する職務を行う合議制の機関のことで、国でいうと公正取引委員会や国家公安委員会などが、これにあたります。

 教育委員会の委員の数は地方公共団体によって多少異なりますが、標準的には5人程度で、議会の承認を受けて首長が任命します。教育委員会のトップである委員長は委員の互選によって選出されます。そして、その教育委員会には学校の存廃や教職員の人事、教育方針、教科書の採択など多岐にわたる教育行政案件を決定する権限が与えられています。

 しかし、その絶大な権限に見合った責任を自覚している教育委員は、まずほとんどいないのが実情でしょう。仮に都道府県、市町村内で教育に関する重大な問題が生じれば、本来なら教育委員会が責任をとるべきでしょうが、そういうことはまずありません。

 仮に責任をとるといっても、その職を辞する、あるいは解かれるだけの話ですから、別に職業を持っている委員本人にとっては痛くもかゆくもないでしょう。そうした教育委員会に形式上、教育行政の決定権限が与えられているため、首長はそれを「隠れみの」にして責任をとらなくていい、つまり、だれも責任をとらなくてすむシステムになっているのが、日本の教育の現状なのです。

もうひとつ、教育委員会制度を廃止すべきだという根拠として、教育委員会の歴史に触れたいと思います。教育委員会が設置されたのは先の大戦後のことで、連合国軍総司令部(GHQ)の要請で、米国の教育使節団が昭和21年に来日し、教育委員会の設置を勧告したのがきっかけです。これを受けて、文部省は23年に教育委員会を設置しました。

 米国が教育委員会を設置する大義名分としたのは、教育行政の地方分権化、民主化、自主化、中立性の確保でした。しかし、本音は戦前の日本の教育を否定するということに主眼があったと思います。

 当初、教育委員会の委員は選挙で選ばれる制度、つまり公選制でしたが、低投票率や党派的対立、教職員組合を動員した選挙運動などの問題が生じたことから、31年に公選制は廃止され、議会の承認によって首長が任命するという現在の制度になりました。

 この経緯をみてくると、教育委員会は日本国憲法などと同様、戦後、米国から押しつけられた制度という側面があります。その米国が掲げた大義名分も、公選制の廃止や教育委員会の形骸化によって、今や意味をなしていません。

 ちなみに、文部科学省によると、教育行政の決定権限を「教育委員会」という行政から独立した機関に与えているのは、米国と日本だけだそうです。ほとんどの国はやはり、行政が教育についても決定権限をもっています。

 その米国も、州や地方学区ごとの教育委員会のうち95%は公選制がとられており、日本のように首長が任命しているのはわずか5%にすぎません。それを考えても日本の教育委員会制度は、国際的に奇妙な制度なのです。

こう説明してくると、こんな教育委員会制度はなくして、有権者から選挙で選ばれている首長が、教育行政についても権限を持ち、責任をとるようにすべきだということが、分かっていただけたのではないかと思います。

 実は教育委員会廃止論は今に始まった話ではありません。平成10年以降、経済界や改革派首長などから教育委員会の廃止を求める声はすでに上がっていました。国の地方分権改革推進会議も平成16年に「各地域の実情に応じて地方公共団体の判断で教育委員会制度を採らないという選択肢を認めるべきだ」との意見書を提出しています。

 しかし、教育委員会廃止まで踏み込んだ抜本的改革は行われていません。原因は中央の政治が及び腰だったからです。冒頭に書いたように日本の教育で難問が山積している今、政治が教育改革を見て見ぬふりをすることは許されません。各党は教育委員会廃止も含めた教育改革を真剣に議論すべきです。

 維新の会の基本方針を受けて、私が親しい自民党議員に教育委員会の廃止について意見を聞いてみたところ、ほとんどが賛成でした。自民党が党内で検討したら、教育委員会廃止に賛成する意見が多数を占めるのではないでしょうか。

 維新の会と自民党が教育委員会廃止で一致したとすれば、おそらく他党からも賛同者が出て、関連法改正案が成立する可能性は十分あると思います。そのカギを握っているのは政権与党である自民党です。維新の会の改正案提出を待つのではなく、今からでも検討を始めてもらいたいと思います。

--------引用ここまで

そのとおり!

6 件のコメント:

  1. 要点だけ述べます。

    教育現場が無責任体制とでもいうべき状況にあることについては同意しますが,その理由が,教育委員会そのものにあるとするのは,飛躍が過ぎると考えます。

    システム自体が正常であっても,適任者を選任しない限り,システムが正常に稼働することはあり得ないでしょう。人の問題を,システムの問題にすり替えているのではないでしょうか。システムそれ自体の問題について注意深く検証した例を,残念ながら聴きません。

    (私にすれば,教育行政に携わる行政職員(事務局職員)らが,事なかれ主義に陥り,自分たちの利益を第一に行動していることが,一番の問題であると考えます(そこに無知な教育委員が任命されるのですから問題はより深刻です。)。)

    では,首長ならば,責任はとれるのでしょうか。首長は,当該自治体の行政事務について,包括的に処理する権利義務を負います。首長にとって,教育行政は,処理すべき多数の行政事務のうちの一つです。そして首長には任期があり,選挙で選出されます。つまり他の事務が教育行政とが市長を介してダイレクトに接続され,教育行政が,政治的に影響を受ける危険性があります。

    つまり首長が教育行政を司る場合,本質的に他の行政事務と間で利害の衝突が生じます。

    この点,首長以外の者に教育行政の権利義務をゆだねた場合,利害の衝突が生じることは,あり得ません。両者が適切に機能する限り,両者は,特別の緊張関係にあり,結果として,適切な事務の遂行がされるものと合理的に期待できます(監査のみではこのような緊張関係は生まれません。)。
    中立性や公平性は監査機関を作れば問題ないとしています。では裁量の範囲内で,政治的中立性,妥当性,連続性に問題が生じた場合,つまり,当不当以外の問題が生じた場合,これらは,いかに処理すべきなのでしょうか。監査だけで,本当に十分なのでしょうか。

    問題は,教育行政において,このような利害の衝突が許されるかです。

    教育は,良識ある,主権者たる公民としての市民を育成するための具体的手段であり,場です。その方法,内容が政治的に左右されることはありえず,教育が,自治体,国家形成の根幹に直接関わることであり,独立した立場で,かつ長期的な視点のもと考える必要があることから,程度の差を問わず,利害の衝突は,一切許されないものと考えます。

    とすると,首長は,教育行政において,責任者を定める以外の権限を持つことは,許されないと考えるべきです。市民は,首長とは別の専門家を教育行政権者として選任し,直接(公選)ないし間接的(首長任命)に,教育行政に係る権限を委任すべきでしょう。

    教育委員会を廃止し,首長が責任を取ればいいとする主張は,この利害の衝突を全く考慮していないため,相当ではないと考えます。

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  2. 現状は5名の「教育委員」が市長により選任(議会同意が必要)され、「教育委員」の互選により「教育委員長」が選ばれ、残った4名の「教育委員」の一人が「教育長」となる仕組みです。そして「教育委員会」の合議制で教育行政が行われます。

    「合議制」であるがゆえに責任の所在がはっきりしなくなることは前述のとおりです。また、実務上、一番の責任を持つ恰好の「教育長」を市長が任免できないことも問題であると思います。

    ひとつの案としては、「教育長」を市長が任命し「教育長」を含めた5名の「教育委員」での合議制とすれば、現在よりもよほど市長としての責任ある(意向を踏まえた)教育行政ができるのではないかと思うところです。

    いずれにせよこのことについては現状のままでよいとは思いませんので、真剣に議論して頂きたいと思います。

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  3. 自分の書き方が、独任制を想起させるような内容だったので、誤解を招いたかもしれません。

    現状、教育委員会制度は、あくまでも合議制です。
    そして、委員長は、同輩中の主席という位置づけでしょうし、教育長は、その実、常勤委員みたいな位置づけですから、互選が妥当するでしょう(もっとも、実際上、多大な権限を教育長は有するのですから、首長が直接任命することもあり得ないではないでしょう。)。

    さて、行政事務を行うにあたっては、一定の目標が存在します。この目標により適合的な制度が選択されているわけですから、合議制に、たしかに責任の所在が曖昧になりがちというデメリットがあるのだとしても、直ちにそれが、合議制を否定する理由にはならないと考えます。

    独任制と合議制とを比較した場合、たしかに責任の所在がより明確になるのは独任制でしょう。スピーディーな意思決定も期待でき、必要なことを必要な時期に行うことも期待できます。反面、スピーディーゆえに慎重さにかける可能性も考慮すべきです。スピーディーさと慎重さはトレードオフの関係にあり、どちらかを望むならば、他方を犠牲にせざるを得ません。

    この点、教育は、長期的視野にたち、政治的意見に左右されずに行うべきことがら。その性質上、客観的に「正しい」ことを教えるべきですから、その分慎重となるべきです。
    責任の所在が曖昧になっても、慎重さをとった。教育委員会制度は、そのように設計されていると理解すべきです。

    次に、委員会の実質的機能不全について。これには首長にも一定の責任があると考えます。なぜならば、委員を選任したのは、他ならぬ首長なのです。適切な要員を委員に選任できていれば、事務局を適切に掌握し、問題はそれほどなかったはずです。裏を返せば、事務局にも、一定程度問題があることを示唆します(だって、そうでしょう。)。

    教育現場での問題の顕在化は、教育委員会の機能不全と(事務局の利益を代表しているとしか思えない教育長がいるため?)、事務局での事なかれ主義や自己保身または自分たちの利益の確保といった問題とが、複雑に絡み合った結果、生じたことであると考えます。
    とすると当然、教育委員会のみの手直しでは、不十分なことは明白です。

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  4. 市議のように教育委員の会議出席数や提案数などの資料はあるんですかね?

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    1. 確かに、どういう協議が行われているか注目する必要がありますね。研究します!

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    2. 「会議録」を作成することになっています。提示してもらうよう申請します。

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