若林純一「議員だより」 2013年秋冬号
「損得より善悪」「説明責任を果たす」「子供たちにツケを回さない」「正直者が馬鹿を見ない」そういう社会を目指し「誇りをもって天分を活かしきるまち 臼杵」となるよう行動します。
人口減少と高齢化が進み、財政状況も厳しさを増します。「市役所任せ」ではなく「市民一人ひとりが関わり、自分たちでできることは自分たちで行う。効率的な仕事で市役所をスリムに」そういう方向に向かうよう行動し、皆さまに情報をお伝えします!
■地方交付税の削減に伴う、市職員の給与カットが行われました
東日本大震災の復興予算確保や消費税増税前という社会情勢に配慮して、国家公務員給与が時限的に下げられました。その結果として国家公務員よりも地方公務員の給与水準が高いという現象が生じ、国は地方公務員も時限的に給与を下げるようにと、その財源である「地方交付税」を削ってきました。
地方交付税の削減に対応するための「給与カット条例」が可決しました。これにより、職員給与は平成25年8月から平成26年4月まで「月額給与」が4%カットされます。月額給与35万円の職員は、月々1万4千円の給与カットとなります。ボーナスのカットはありません。国から削減された地方交付税額は約1億3千万円、今回の条例による給与カット総額は約6千万円で、差額の不足分約7千万円は一般財源(市民サービスに振り向けられる予算)から補填されることになります。同時に4月から10%カットされていた市長給与は20%カットになりました。
職員給与にあてるための財源「地方交付税」が削られた以上、地方公務員の給与がそれに見合う分だけ下げられなければ、残りの差額分は本来市民サービスに回るべき財源が市職員の給与にあてられることになります。今回「地方交付税」のカット分に相当する額まで給与をカットするには至りませんでした。これにより本来市民サービスに向けられるべき7千万円が職員給与を下げないために使われる結果となります。
しかし私も今回の条例案には賛成しました。その理由としては次のとおりです。カット率が、大分県他市に比べて遜色ない(実態としては上位の)カット率であること。臼杵市の人件費比率(歳出の人件費に占める割合)は大分県内で3番目に低い率であること。職員数も市民一人当たりでは大分県内で4番目に低いことなど、職員定数や給与水準において県内他市との比較においては努力の痕が伺えることからです。
「退職手当」が民間のそれに比べて高いという調査結果に基づき、昨年度末に「減額条例」が制定されました。臼杵市は3月25日施行とし、その年の退職者の手当を減額しました。減額を避ける「駆け込み退職」はありませんでした。しかし臼杵市以外の県内の市町村では、その年の退職者の減額を避けるために「条例」の施行を4月1日以降としたため退職手当は減額されませんでした。これにより約○千万円の退職手当が市民のために使われることになりました。臼杵市の英断を高く評価します。
「退職手当」と同様「給与カット」についても、「国の方針により、職員給与に充たる地方交付税がカットされた。その全額を職員給与のカットで応じるには職員には大きな犠牲を強いることになる。しかし臼杵市の現状を見るとき、市民サービスに充てるべき貴重な財源を職員給与のカット補填に充てることは出来ない。苦渋の選択であるがその全額を給与カットで補填する。」そういう決断をし「市民と共に未来を創る市役所」であるという気概をアピールできなかったかと大変残念に思います。
国の強権をもってしても公務員給与はなかなか下らないことを実感しました。今後も、市民サービスや社会保障・公共投資・職員給与など「限られたお金の使い道」を考えていかねばなりません。
■「旧・中国中国陶瓷美術館」を購入「臼杵ミュージアム(仮称)」整備へ
臼杵市には貴重な古文書や古い書籍類・近世絵図資料などがあり、展示活用を望む声が多くありましたがこれまで実現には至りませんでした。「中国陶瓷美術館」の展示室が閉鎖され、平成23年11月「臼杵市史談会」から施設の有効活用を求める要望書が出されました。一部改修すれば活用が可能であるとの調査結果から臼杵市が購入を決めたものです。購入額は、土地が1億598万9千百円、建物が7359万4千円、庭木が1214万9千円で、土地は鑑定評価額どおり、建物と庭木は鑑定評価額から5%を差し引いた額での契約となりました。
閉鎖された「中国陶瓷美術館」を臼杵市が購入し資料館として活用しようという方針には賛成です。しかし、その購入額については「もっと安く購入できなかったのか」という不満が残ります。交渉経過を議会質問しました。「先方から『購入を検討して欲しい』との話はなかったのか?」との問いに「なかった」と市長。「こちらは買いたい、先方は買ってもらう必要はない、だから十分な値段交渉ができなかったということか?」の問いに「公共の購入ルールに従ったまで」との答弁でした。
そもそも美術館ですから、他の用途に転用することは大変困難です。民間に売却したいと考えても、購入先はなかなか見つからないと思われます。臼杵市が購入を検討するというのですから「渡りに船」先方も「買って欲しい」と思わないわけがありません。買収価格は交渉次第でかなり下るのではないかと思いました。しかし、相手の意向を察せられないようでは「交渉」など出来るはずがありません。
交渉にあたり、購入費を予算計上する際にも「出来るだけ安くなるようしっかりと交渉して欲しい」と何名かの議員も要望しましたが、結果は「公共の購入ルール」としては最高額である「鑑定評価額」から僅かな値引きという額で決着してしまいました。値引き額は、最小限必要な改修費用にも満たない額です。結果として高値での買収となりました。しかし経過はどうあれせっかく購入した施設です。貴重な資料を活用し、歴史が積み重なって今の臼杵が形づくられていることを内外に発信して「観光振興元年」に結びつけなければなりません。
■「お達者長生きボランティア(ポイント)制度」が始まりました
65歳以上の方が、自治会や介護施設などの要請に応じて無償でボランティア活動をする場合1時間につき100ポイント(100円相当)のポイントを受け取れます。1年に5000ポイント(5000円相当)が上限です。事前に市に登録申請し手帳を発行してもらう必要があります。
今回の仕組みは施設でのボランティア活動に限られています。ボランティアを必要とする方は多くいらっしゃいます。自宅での食事の世話や掃除、身の回りのお手伝いなどです。一方で「私は元気だから、お手伝いが必要な方のお役に立ちたい」という方もおられます。そういう方々を結びつけ、ボランティアマインドを持った高齢者が活躍できるような仕組みに発展させて欲しいと思います。
仕組みとしては、ボランティア活動した時間を預託(貯金)して、自分がサービスを受けたいときに引き出せる(利用できる)仕組み。食事の世話や掃除、身の回りのお手伝いなどを行った時間を蓄え、自分がサービスを受けたくなったときには無料でサービスを受けられる仕組みです。利用者は1時間当たり300円を負担、サービスを提供した人は「時間預託」若しくは300円を受け取る仕組みです。昔からある「互助」を後押しする仕組み、いきいきと自立して暮らすための仕組みづくりです。
このことについて議会質問しましたが、市長は「市民のニーズが見えてくれば取り組みたい」との答弁。ニーズは大いにあると思いますが、皆さんはどのようにお考えでしょうか?
■「防災まちづくり検討会議」が設置され市庁舎の位置が検討されます
南海トラフ地震に備え、市庁舎の移転も視野に防災対策を考えます。現市庁舎は1974年建設で海抜が1.8m。県の調査では最大津波高は5.75mと予想されています。耐震調査で震度6強での崩壊の可能性も指摘されています。検討会議は、有識者・行政関係・住民など20人規模になる見通しで、庁舎移転を含めて論議し市の総合計画に反映させることになります。
建替えとなれば多額の費用がかかります。幸いにも「合併特例債」(有利な借金)を利用できる期限が平成31年度まで延長されました。どこに建替えるとしても「合併特例債」を活用しない手はありません。検討会議の結果は、平成26年度中に策定される次期総合計画に盛り込まれます。そして「合併特例債」の期限である平成31年度に向けて市庁舎建設となっていくと思われます。これからの臼杵のまちづくりを左右する最重要課題。納得のいく議論となるよう「過程の公開」を望みます。
■市営住宅使用料 高額滞納者についてのその後の状況
上位10件の滞納額の変遷は以下のとおりです。単位は万円です。
222・196・158・152・151・129・127・127・126・125 平成23年8月調べ
↓220・219・192・192・181・176・151・149・149・143 平成24年6月調べ
↓211・209・190・181・178・176・149・145・141・139 平成25年8月調べ
高額滞納額を指摘して以後、一旦は市役所の対応の遅れからその額が増えましたが、現在は、連帯保証人に連絡を取るなどして、少しずつですが滞納額は減ってきています。悪質なケースについては訴訟手続きを行うようにしています。最近では滞納が2ヶ月以上になった場合にはこまめに電話又は訪問を行い、納入がない場合には連帯保証人に連絡をとり納入してもらっています。その結果現年(過去の分を除いた直近の年)の収納率は99.04%となり、県下で3番目(1番2番は大分県住宅供給公社管理分、市直営では最上位)の収納率となっています。
これまでに現在のような取り組みができていれば、多額の滞納額を生じることはなかったはずです。長い間放置してきた市長始め職員の怠慢のつけはあまりにも大きいです。滞納者にも気の毒ですが「過去において当然支払うべき家賃」です。少しずつでも返済して頂かなければなりません。
■水道使用料 高額滞納者についてのその後の状況
上位10件の滞納額の変遷は以下のとおりです。単位は万円です。
136・93・90・61・51・43・42・36・36・33 平成23年8月調べ
↓97・87・74・56・43・40・40・35・34・32 平成24年春調べ
↓84・50・47・42・41・36・36・34・33・31 平成25年春調べ
以前は支払われずに5年以上経過した滞納分は「不納欠損処分」として帳消しになっていました。平成22年度から不納欠損処分の方法が変わり、5年で処理していたものを2年で処理する代わりに滞納者(債務者)が破産や死亡、行方不明でない限り滞納額は消えることは無くなりました。
これにより、支払いが進まなければ滞納額が雪だるま式に膨らんでいくことになります。滞納状況が数字ではっきり見えることになり、これまでのような怠慢は許されなくなりました。現在は、戸別訪問や給水停止処分などをこまめに行った結果、少しずつではありますが滞納整理が進んでいる状況が見て取れます。あらゆる業務において「正直者が馬鹿を見る」ようなことのないよう願います。
■市営の「下屋敷前駐車場」が1月4日から有料になります
無料化により不適切な占有が多発したことから有料化することになりました。1時間以内の利用は100円、それ以後は30分ごとに50円加算されます。ただし30分以内の利用は無料です。「駅前・畳屋町・下屋敷前」の駐車場を同じ業者に「機械式」で業務委託すれば安く管理できるとの思惑から3箇所とも「機械式」するという前提での予算計上となりました。
臼杵市を訪れる方がまず最初に利用すると考えられる「下屋敷前」だけは人を配置して対応するほうがよいとの考えから「機械式」とする予算案に反対しました。「下屋敷前」を人での管理とすれば、3つ駐車場を「機械式」とするより年間44万円ほど余分にかかるとされていますが、「機械式」では、雇用の場が失われ、市内の委託業者に支払われるはずの年間256万円の委託料は全て市外の業者に渡ってしまいます。44万円を節約するために、256万円を失うことになります。
また「観光振興元年」を目指すためには「おもてなしの心」が大切。町並みガイドとともに臼杵を散策した方々はほぼ例外なく「いいまちですね」という感想を抱いてくれています。歴史の積み重ねや温かい人情に触れる機会を増やすことが大切です。人が常駐すれば「観光交流センター」や「観光ガイド詰め所」への案内ができます。最初に利用した駐車場で暖かい声かけができれば「よい印象」を持ってもらえると思います。観光振興には些細なことの積み重ねと口コミが大事です。
■「西南地区交流センター」が建設に向けて動き出しました
かねてから要望のあった施設で、建設用地は「臼杵市消防本部・消防署」の裏手に確保されていました。今議会で、防災拠点を兼ねた施設として建設が認められ設計料が計上されました。今年度中に設計を終え、来年度以降建設される見通しです。
市浜地区には多くの人が住んでいますが、コミュニティセンターや地区公民館がなく、事務局としてお世話をする人もいませんでした。地域活動を支える基盤としての「西南地区交流センター」が建設され、他と同様に職員が配置されれば、活動が活発に行えると共に地域の諸課題への対応がしっかりとできるようになることが期待されます。施設の完成にむけて、地域の人が横断的に関わる組織である「市浜地区地域振興協議会」の設立が待たれるところです。
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高齢化に伴い公共交通の役割は重要になってきています。私の父も免許を返納して後、「市内循環線」を毎日のように利用しています。これがなかったらどんなにつまらない生活を送っていることでしょう。どこに住んでいても市街地に出向く足は重要、午前中に自宅を出発、用事を済ませて午後に帰れる便を最低週2~3便は確保したいものです。今年度「臼杵市地域公共交通総合連携計画」の見直しが行われます。コミュニティバスや乗り合いタクシーなどを駆使して、効率的で充実した計画としなければなりません。
市長は常々「あれもこれも」は無理な時代、「あれかこれか」を選択せねばならないと言っています。そのための「行財政活性化推進委員会」があります。とかく分かりにくいと評判の「市民アンケート」の結果に基づき評価を下します。市民委員と大学教授で構成されています。審議過程は公開されていますが専門的でなかなか困難な様子です。
市役所内部の「事務事業評価」も行われていますが、ほぼ全てが「現状のまま」。自らの仕事を自らが評価するわけですから当然の結果と言えます。議員による「事務事業評価」の取り組みも「現状のまま」「重点化する」という結果になりがち。「廃止」となれば関係者の反発が予想され、なかなか「廃止」とはなりません。
やはり「事業仕分け」です。「そもそもその事業は必要か?」の視点で、専門知識を持つ「仕分け人」が公開の場で議論を行い「現状のまま」「改善」「民間で行う」「廃止」に仕分けるもの。行政に対する的を射た批判や信頼感の醸成、市民の主体的参画のきっかけともなります。これからは思い切った事業の見直しが必要な時代、利害の外に立つ専門家による「仕分け」が必要、臼杵市にも導入したいものです。