マスク論争に終止符?エビデンスの総本山が内部で大揉め…【マスク研究の歴史から最新エビデンスまで総まとめ】
こんにちは。医師・医療経済ジャーナリストの森田です。
いよいよ3月13日、
「マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本」
となりましたね。
まあ、もともと強制ではなかったので、
「任意から任意」
になっただけなんですけど(笑)。
さて、表題の
「マスク論争に終止符か?医学エビデンスの総本山が内部で大揉め…」
です。
実は医学界では、
「新型コロナやインフルエンザなどの呼吸器感染症にマスクは効果があるのか?」
という疑問はずっと研究・議論されてきていたのです。
言ってみれば永遠の課題と言っても良い論点です。
そして…実はコロナ前の段階で、ほぼ結論が出ていました。
○ 2011年のコクラン分析
世界中の医学研究・医学論文を可能な限りすべて集積して世界最高の医学的エビデンスを作り出す国際集団「コクラン」は、2011年の論文でこう言っていたのです。
「マスクを着けても着けなくても差はない」
と。(論文はこちら→https://doi.org/10.1002/14651858.CD006207.pub4)
けっこう衝撃的ですよね。
インフルエンザなど人から人へ感染が波及してゆく感染症に対し、マスクはいかにも効果ありそうですし、また感染症専門家もテレビであんなに「マスクは大事!」と言っているのに、医学エビデンスの世界的総本山「コクラン」さんが
「マスクを着けても着けなくても差はない」
と。言っていたのですから。
ただ、これはコロナ前の話。
その後2019年末から始まったコロナ禍を受け、コクランは「2020年」に論文を更新しました。
○ 2020年のコクラン分析
その結果がまた
「マスクを着けても着けなくても差はない」
だったのです。(論文はこち→https://doi.org/10.1002/14651858.CD006207.pub5)
またしても意外ですね。
でも実は、日本でマスク推奨を口うるさく言ってくるあの専門家の先生たちも当時は
「マスクをしてもしなくても意味ない」
と公式に言っていました。
こちらは、いつもマスクの重要性を強く主張している忽那先生の2019年の貴重な動画。
「感染症の予防に繋がるという証拠はない」
と当時の動画でハッキリ言われています。
こちらもマスクの重要性を強く主張されている岩田健太郎先生。
「マスクは意味ないですね」
と当時はハッキリ言われています。
これらのご発言の裏には、前述の世界最高のエビデンス総本山「コクラン」さんの論文の影響があったのでしょう。
エビデンスの総本山のコクランさんが言った以上、一介の医師としてそれに反論するのはかなり難しいのが現実ですから。
○ 世界のマスク信仰とマスク離れ
しかし…それにも関わらずその後のコロナ禍では世界中でマスクが推奨されたのは皆さんご承知の通り。
もちろん当時は甚大なコロナ感染被害の危機的状況(結果として日本ではそこまでなかったわけですが)があったわけで、
「何もしないよりは、根拠が薄いとしても何か対策を打ちたい!」
多くの人がそんなふうに考えても、それは仕方ないことだと思います。
事実、コロナ禍2年目にもなった2021年には様々なマスク研究論文が発表され、
その中には
「マスクが有効!」
という論文も多数ありました。
日本の政府や専門家・マスコミは、そうした論文を根拠にしてこの3年間、すべての国民に「マスク推奨」を強固に主張してきました。
そのおかげか、日本人のマスク率が現在に至るまでほぼ100%に達したのは皆さんご承知の通りです。
一方、コロナ禍を一通り経験し終え、感染も一段落して久しい現在、欧米先進国含む世界各国では、もう殆どマスク姿の人を見なくなりました。
大谷翔平のメジャーリーグや、WBC世界大会の観客席(日本会場以外)を見ればそれも良くわかります。
その流れから、日本でも3月13日からマスクは「個人の自由」となりました。
…あれ?なんとなく世間はどんどんマスクを外してゆくけれど…
結局マスクは効果あるの?ないの?エビデンスはどうなったの?
○ 2023年、最新のコクラン分析
ではエビデンスの総本山「コクラン」さんはこれについて現段階でどう思っているのでしょうか。
そんな中、2023年1月とうとうコクランさんが最新の分析結果を発表しました!
コロナ後の多数のマスク論文を含む、世界中の医学研究・医学論文を可能な限りすべて集積して分析した結果…!
「マスクを着けても着けなくても差はない」
とのこと(https://doi.org/10.1002/14651858.CD006207.pub6)
「変わらんのかい!」
と世界中の医療関係者がズッコケながら、
「じゃ、今まで世界中でマスクしてなのは何だったの!?」
と突っ込んだわけです。
○ 医学会からの批判
ただ、案の定このコクランさんの発表に対しては、世界中の医師・医療関係者から多くの批判が集まりました。
曰く
・コロナ前の研究が多く含まれていて、コロナに対するマスク効果が正確に反映されていない
・マスクをした群でもマスクの着用率が低かったのではないか
・マスクは、「自分が感染しない効果」以上に「周りに感染を広げない効果」が期待される
などなど。
権威ある世界のコクランさんですので、そんな外野の声は無視するのかと思っていたら、なんと今回は大きく反応しました。
○ 編集長の謝罪
コクランの編集長のカーラ氏(Karla Soares-Weiser)が3月10日、コクランの公式ホームページで正式に謝罪したのです。
曰く
と。
(声明本文はこちら→https://www.cochrane.org/news/statement-physical-interventions-interrupt-or-reduce-spread-respiratory-viruses-review)
医学界は
「ほ~ら、やっぱりコクランさんも訂正した。やっぱりマスクは効果あるんだよ!」
と、大盛りあがり。
しかし、今度はコクランの論文を書いた実際の著者が反発しました。
○ 論文著者の反論
というのも、コクランには編集長もいますが、それとは別に実際に分析して論文を書く「著者」もいるのです。
今回論争になっている最新のマスク論文も、コクランの過去のマスク論文も、実はすべての「著者」がトム・ジェファーソンさんなのですが、
そのトムさんが、こう反論しているのです。
本文はこちら↓
なんと…世界的権威のコクランさんも内部で大揉めです…(*_*;
○ 歴史は繰り返す
実はコクランさん、過去にHPVワクチンの論文でも大揉めに揉めました。
コクランが発表した「HPVワクチンでガンが減った」という論文に対し、コクラン創業メンバーのゲッチェ氏が2018年、
「この論文は偏りのある報告や研究に基づいており、その意味で非常に恣意的であり、よって信頼に足るエビデンスになっていない。」
と痛烈に猛烈に批判したのです。
ゲッチェ氏はこの後突然、コクランの理事を解任され、事実上追放されました。
ゲッチェ氏は、HPVワクチンについてだけではなく、マンモグラフィー(乳がん健診)の有用性、精神科薬剤の濫用についても以前からコクランを痛烈に批判してきていましたので、それもあってのことかもしれません。
○ 我々は何を信じれば良いのか?
世界的権威でエビデンスの総本山「コクラン」さんですら内部で大揉め…
我々は一体、医学に関して何を信じれば良いのでしょう?
マスクは着けたほうが良いのでしょうか?効果はないのでしょうか?
僕はこう思います。
「専門家同士でも意見が割れて揉めるような、答えがハッキリしない問題は、多分どっちを選んでも個人レベルでは差などわからないレベルということなのだから、どちらを選んでも正解でいいのではないか」
と。
DNAのヒトゲノムなどが解明されてきたので、医学が人間の体を殆ど解き明かしたような気になっている方も多いかもしれませんが、それは端的に言って「幻想」です。高度に発達してきた医学ですが、そんな医学でもまだ殆どの事が解明できていないのです。
人間の健康や病気に対して大きく影響しているのでは?と最近徐々に分かって来た「腸内細菌」ですが、その全貌は殆ど分かっていませんし、その事自体が本格的に研究されだしたのも、つい最近のことです。
「分からないことは分からない。」
のです。
この現実をしっかり受け止め、自分の心や体の声に耳を傾けましょう。
マスクをしたら自分は不快なのか?
快適なのか?
子どもたちへの影響はどうなのか?
そうすることで、
「自分にとっての正解」
を個人個人が探求していくしかないのではないかと思います。
だって、どんなに医学が発達したところで医学はあくまで確率論でしかものを語りません。決して人生の責任をとってくれません。人生の最終決定権は「自分」にしかないのですから。
以上、「マスク論争に終止符?エビデンスの総本山が内部で大揉め…【マスク研究の歴史から最新エビデンスまで総まとめ】」
でした。
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■内容(はじめにより抜粋)■
2019年に始まった新型コロナウイルス騒動。
医療業界をはじめ行政やメディアに先導されたこの騒動は、残念ながら「経済を壊し」「人々の絆を断ち切り」「自殺数を増加」させてしまった。
私は経済学部出身の医師という立場から、このような過剰な感染対策によるデメリットを憂いていた。そしてそれを問題視する発信を続けてきた。だが、この「過剰にコロナを恐れてしまう風潮」は2022年になっても依然として継続している。
2022年1月の全国高校サッカー選手権の準決勝では、選手2人に新型コロナ陽性反応が出たとのことで関東第一高校が出場を辞退した。
まるで「コロナに感染したら社会の迷惑・厄介者」と言わんばかりの対応だ。感染してしまった当該生徒の気持ちを察するに余りある。
コロナ騒動が始まってもう2年も経っているのに…
社会の過剰反応は当初と何も変わっていないように感じる。
今後もこのような風潮が続くのであれば、それこそ「新しい生活様式」となって社会に定着し文化になってしまうのだろう。
私はそんな「家畜」のような生活を、感染を恐れて人との絆や接触を断ち切るような社会を、絶対に子どもたちに残したくない。
そんなやりきれない思いが日々高まってゆき、我慢できなくなったのが、本書を書こうと思ったきっかけだ。
■タイトル・内容の過激さから数々の出版社から書籍化を断られクラウドファンディングによる自費出版となった本書。
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