(以下引用)
「頼むから、もう放っといてくれ!」
オーストラリアのナーシングホーム。入所者はこの部屋で家族に見守られて亡くなる。普段は入所者の談笑の場として使われている。
以前に勤務していた病院でのことです。施設に入所中の86歳の男性患者さんが、肺炎を起こして入院してきました。点滴を自分で抜いてしまうため、両手を太いひもでベッド柵にしばられました。すると、今度は起き上がろうとするため、胴体が抑制帯で縛られました。抑制帯には鍵がついています。患者さんは寝返りもうてません。私がとなりの患者さんの診察に行くと、この患者さんは「頼むから、もう放っといてくれ!」と悲痛な声で叫びました。そして、数週間後に亡くなりました。主治医ではないので、患者さんの希望をかなえることはできませんでしたが、放っておいてあげるべきだったと患者さんに対して申し訳なく思っています。
別の90歳の自宅にいる男性患者さんは、老衰で元気がなくなり、ほとんど物を食べなくなりました。もともと重い認知症があり、妻の顔もわかりません。よく面倒をみているお嫁さんが、「点滴はしなくてよいのか」と訪問診療に行っている私に聞きました。老衰だから点滴をしない方が楽に死を迎えられることを説明すると、点滴をしないことになりました。そして数日後に亡くなりましたが、死ぬ前日までバナナを少量食べて、眠るように亡くなりました。「こんな穏やかな死に方もあるのですね」と家族から感謝されました。
家族が高齢者の治療において希望することは、苦しまないことです。疼痛などの肉体的な苦痛だけでなく、縛られたりする精神的な苦痛があってもいけません。すべての患者さんが穏やかな死を迎えられるように、医療現場は終末期医療のあり方を考えなくてはならないと思います。(宮本礼子)
-------引用ここまで
医療費が伸び続けている。特に高齢者の医療費の伸びが大きいとの記事を目にしました。
本気で医療のあり方を考えねばならない時期にきています。
尊厳ある死を選ぶしくみ作りが必要であると思います。
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