社会保障と税の一体改革
野田政権が進めている“社会保障と税の一体改革”の政府・与党素案が 正式に決まった。(1月6日)
消費税問題については、野田総理は 政権発足後からを引上げを示唆しており、昨年11月のG20首脳会議でも 総理は 10%アップを表明し、国際公約にもなっていたものである。毎年 1兆円以上伸び続けている社会保障費は、今後 ますます進む高齢化により 一層膨らみ、このままでは、我が国の社会保障制度が 早晩 破綻に追い込まれることは 目に見えている。 歳出抑制とともに、消費税増税は 避けて通れない。
しかし、与党民主党内には、消費税増税への根強い反対があり、反対署名活動も行われ 約130人もの国会議員の署名が集まったと言われる。 更に、民主党の内山晃氏等9人の衆院議員が、消費税増税に反対して 昨年暮に離党届を出し、年明け早々“新党きづな”を結成した。また 小沢一郎元代表は、年始からの遊説で 消費税増税反対を訴え、野田政権を批判している。いづれも 増税は マニフェストに反していると主張している。
このような中で 先月29日に開かれた民主党税制調査会・一体改革調査会の合同総会では、野田首相も出席して 深夜まで議論して ようやくまとめることができた。結論は、反対派に配慮して 政府の実施時期(案)を 半年伸ばして、2014年(平成26年)4月から8%に、2015年10月から10%に引上げるというものだ。また 消費税増税は、議員定数や公務員の人件費の削減を実施した上で行う等となっている。
これまで 野田総理には、党内融和重視のあまり 指導力の欠如が指摘されていたが、今回の消費税問題については、強い決意を見せている。党内の反対勢力に対する 総理の指導力が、問われる場面である。
野党自民党は、消費税アップは、マニフェスト違反だとして反対している。自民党の言い分は、始めから 誤った欠陥マニフェストで 国民を欺いて 政権を取ったのだから、消費税増税の法案提出前に 衆院を解散して、改めて国民に信を問うべきだと主張している。ねじれ国会のため、野党の協力がなければ 参院での増税法案の成立は困難である。
しかし、野田総理は、この際 最後まで信念を貫くべきだ。それは、解散総選挙も視野に入れることだ。成行き如何によっては 衆院解散もあり得ることを 事前に表明して、不退転の決意を示すことができれば、道は開けてくる。
もし、仮に 総選挙で民主党が敗北すれば、それは消費税反対の民意が示されたことになると同時に、自民党の消費税増税の公約も 国民から拒否されたことになる。 自民党は、自らの公約に消費税増税を掲げながら、民主党が行う増税には 反対という姿勢は、まさに党利党略であり、筋が通らない。この問題については、野党自民党や公明党は、政府・与党との協議に応じ、十分な議論を 尽くすべきだ。消費税を 政争の具にすべきではない。
民主党のマニフェストには、当初から不適切なものや非現実的なものが多く、子ども手当てや高速道路無料化をはじめ、既に 大半が 破綻している。民主党は、自らのマニフェストの間違いを 率直に認め、十分説明すべきだ。
本来守るべきマニフェストであっても、これが間違ったものであれば、改めるべきは 当然であろう。逆に、マニフェストに こだわり、不適切な政策に固執することこそ 非難さるべきである。自民党や小沢氏が主張するマニフェスト違反の批判は 当たらない。
社会保障改革の目的は、消費税増税と相俟って、社会保障制度を 将来に亘って (財源的に)持続可能なものにするための システム再構築である。そのためには 支出の抑制や効率化による費用の軽減が 改革の狙いであるはずだ。しかし、これまでの政府・与党間の調整結果を見ると、高齢者や低所得者への給付を拡充する一方で、痛みを伴う改革は 軒並み 見送られており、社会保障費の抑制に 逆行する内容になっている。
社会保障改革の目的は、消費税増税と相俟って、社会保障制度を 将来に亘って (財源的に)持続可能なものにするための システム再構築である。そのためには 支出の抑制や効率化による費用の軽減が 改革の狙いであるはずだ。しかし、これまでの政府・与党間の調整結果を見ると、高齢者や低所得者への給付を拡充する一方で、痛みを伴う改革は 軒並み 見送られており、社会保障費の抑制に 逆行する内容になっている。
例えば、医療費関係では、特例措置で 暫定的に1割に据え置かれている70~74歳の医療費窓口負担を、本則の2割負担に戻す案は 見送られている。 高額医療費の上限引き下げ財源確保のための 外来患者受診1回当たり100円の追加負担案を 見送ったにも拘わらず、低所得者高額医療費の上限額の引き下げは 財源を無視して実施する…等々
年金関係では、年金支給開始年齢を68歳に引き上げる案は、早々に断念。低所得者に対する給付額の加算、年金受給資格の保険料納付期間を 25年から10年に短縮、パート労働者が 厚生年金や企業健保に加入できるよう適用拡大も実施の方向で検討…等々は、いづれも年金財源の支出増に直結するものだ。これでは、せっかく消費税を上げても、将来に亘って 持続可能な社会保障制度の構築には 程遠い。こんな調子では、いくら消費税を上げても 支出に追いつかない。
〔将来 ますます厳しくなる社会保障費〕
今、約2.5人位の現役世代で1人の高齢者を支えているが、あと40年も経てば、1.5人で1人の高齢者を支えねばならなくなると言われている。
これから 戦後生まれの団塊世代が 65歳以上になっていくため、高齢者が 毎年100万人づつ増えていき、逆に生産年齢人口(15歳~64歳)は 100万人づつ減っていくと言えば分り易い。
このままでは 現役世代で 高齢者を支えきれなくなる。
将来に亘って持続可能な社会保障を築くためには、高齢者への給付を極力抑制して、現役層の負担を減らしていかねばならないのに、高齢者への給付を厚くしようとするのは、将来の現役世代の負担を ますます増やすことになり、まさに 本末転倒。先のことを考えない無責任な場当たり主義である。
今、約2.5人位の現役世代で1人の高齢者を支えているが、あと40年も経てば、1.5人で1人の高齢者を支えねばならなくなると言われている。
これから 戦後生まれの団塊世代が 65歳以上になっていくため、高齢者が 毎年100万人づつ増えていき、逆に生産年齢人口(15歳~64歳)は 100万人づつ減っていくと言えば分り易い。
このままでは 現役世代で 高齢者を支えきれなくなる。
将来に亘って持続可能な社会保障を築くためには、高齢者への給付を極力抑制して、現役層の負担を減らしていかねばならないのに、高齢者への給付を厚くしようとするのは、将来の現役世代の負担を ますます増やすことになり、まさに 本末転倒。先のことを考えない無責任な場当たり主義である。
政府は、日本医師会の要請を受けた与党の要求に抗しきれず、主として医師の人件費に充てられる診療報酬部分を 前回に引き続き 1.379%引上げることを決めた(薬価部分を1.375%引き下げたため、診療報酬全体としては 0.004%の引上げとなる)。
民間企業では、賃金の低下傾向が続き、多くの国民が 痛みを受けているというのに、また 公務員についても 給与削減が議論されているこの時期に、医師の診療報酬を引上げるとは、時代錯誤も はなはだしい。引き下げるべきだ。また、民主党政権は、民間の厚生年金と公務員の共済年金の一元化に当っては、公務員の優遇部分である職域加算の見直しは行わず、残す方針だと言う。これは、民主党の支持母体である連合の要求を受け容れたもので、これでは 官民格差を残したままの不完全な一元化になってしまう。
このように 民主党には、現実を無視した理不尽な考え方が目立つ。また、改革の痛みを 極力 現役の働き手や産業界(企業)に 求める傾向が強い。これは 抵抗が少なく 取り易いところから取るという姿勢で賛成できない。その背景には、民主党の理念なき迎合体質(人気取り選挙対策)、左から右までの寄せ集め体質、社会主義的な体質等があると思うが、一口に言えば、議員の資質に 問題ありということになろう。
政府の当初の社会保障改革案は、与党民主党により 骨抜きにされている。野田政権の前に 立ちはだかるのは、野党だけではなく、身内の党内の抵抗勢力の存在も大きい。今回の内閣改造で、岡田克也氏を副総理として 社会保障と税の一体改革・行政改革担当大臣に起用したことは、野田総理の社会保障と税の一体改革実現に向けての万全な体制固めへの強い意志を感じさせる。 “社会保障と税の一体改革”、なかんずく消費税増税が、民主党内の反対勢力や野党自民党等により、葬り去られることになれば、これからの我が国の政治に、取り返しのつかない禍根を残すことになろう。
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