200年前の美談よみがえる
江戸時代、遠く離れた地で病に倒れた父親を故郷に連れ戻すため、現在の臼杵市から茨城県常陸太田市まで向かった姉妹の実話「二孝女物語」が伝わる臼杵市を28日、常陸太田市の青蓮(しょうれん)寺の藤井智住職(49)が初めて訪れた。同寺は、父親が7年間療養生活を送ったと伝えられており、臼杵市野津町にある姉妹の子孫の自宅で、藤井住職が仏壇に手を合わせた。
つゆとときの姉妹は1811年、親鸞ゆかりの遺跡巡礼中に歩けなくなった父親を迎えに行くため、1200キロの道程を2カ月かけて命がけで旅した。親子は青蓮寺で再会。姉妹は、寺の周辺の40-50軒を回り、父親の世話をした住民に丁寧に礼をして歩いたという。
姉妹の話は、茨城県では伝わっていなかったが、2005年に青蓮寺で古い書簡17通が見つかり、地元の郷土史家たちの分析で実話と判明した。美談を語り継ぐため、昨年10月に門徒の寄付金などで寺に記念碑を建立し、今月21日には市民グループ「二孝女顕彰会」も発足した。
仏壇の前で読経した藤井住職は、親子再会200年の節目の年に臼杵市を訪れたことに「姉妹の思いが時代や場所を越えたのだと思う」と感慨深げに話した。子孫の川野勝行さん(66)は「先祖たちもさぞかし喜んでいるでしょう」と話した。
藤井住職らは29日午後1時から、野津中央公民館で「日本人の心」と題して講演。茨城県でこの実話を研究してきた元目白大教授の秋山高志さん(76)、元茨城県立高校校長の野上平さん(74)も参加する。常陸太田市は東日本大震災の被災地で、会場では義援金も募る。無料。同公民館=0974(32)2270。
=2011/05/29付 西日本新聞朝刊=
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